今回は雨漏り原因になることが非常に多い事例として「シングル葺屋根」を取り上げたいと思います。
シングルはフェルト紙にアスファルトを染み込ませたうえで表面に保護用の砂をまぶした防水用の軽量屋根材です。軽くて曲がり、しかも安く施工できるので、コンクリート造・鉄骨造・木造と幅広い建物で使用されてます。
一般的な施工方法は、施工したい場所にアスファルトルーフィングという防水シートを敷いた上にシングルを貼り付け、端部に水切り金物を設置します。
シングルだけでも一定の防水効果がありますが、シングルの劣化や損傷で万が一内部に雨水が入っても大丈夫なように、二次防水としてアスファルトルーフィングを敷いてるのです。
このシングル葺の屋根を原因とした雨漏りが多いのですが、なぜなのか解説したいと思います。
シングル葺屋根を見かける例として、コンクリート造の斜壁があります。おそらく、建築当時はタイル貼りの斜壁だったが、ひび割れ等で雨漏りが発生したため、斜壁にシングルを施工したという事例が多いのではないでしょうか。
しかし、弊社が雨漏り調査をしてきた経験からすると、シングル葺屋根の防水の信頼は低いですね。
それは電気抵抗で調査する弊社ならではの理由なのですが、シングルは水を通すかもしれないということです。
健全なシングルは表面と裏で電極を当てても電気を流しても通電しませんが、ある程度劣化したシングルは電気を通します。これは、表面から裏面へ雨水が染みこむように流れてしまう可能性を示唆していると弊社は考えてます。
実際は二次防水のアスファルトルーフィングが下に敷いてあるので、それだけでは雨漏りはしないと考えられてます。
例えば、下の斜壁のシングル葺屋根の写真を見てください。
開口部から下へ、シングル表面にコケがたくさん発生してます。
開口部右下には1本の線のようにコケが繁殖してるのが確認できます。
これは開口部右下から流れる雨水の影響で、できたものです。
コケは水分を養分として生きてますので、水分があるところにコケが発生してると考えていいでしょう。
これらのコケはシングル表面の水分だけを養分として無いかもしれません。先ほど、シングルは劣化すると水を通すかもしれないと書きました。ですから、コケはシングル裏面へ回ってる雨水からも水分を吸って生きているかもしれません。
だから、大量にコケが発生しているシングル葺屋根は注意してください。
シングル裏面へ雨水が侵入する場所として危ないのが端部の水切り金物です。水切り金物同士の施工が悪かったり、シングルと水切り金物との納まりが悪いとシングル裏側へ雨水が入り込んでしまいます。
例えば、下の写真のような場所。
壁(柱)との取り合いは注意しなければなりません。雨水が流れ込みます。
特に屋根の傾斜の上側は注意して見るポイントです。
屋根の傾斜の上側の方(水の流れで言う上流)で雨水が入ってしまうと、シングル内部では雨水が下流に向かって斜めや横に向かって広がりながら流れます。
特に、シングル葺屋根は傾斜が緩い屋根で使用される例が多いので、その場合、より一層、横方向へ広がってしまいます。
でも、シングル裏側へ入っても二次防水のアスファルトルーフィングが敷いてあるから大丈夫なのでは!?と思ってませんでしょうか?下の写真を見てください。
シングル施工の途中、半分以上のシングルは、一旦コンクリート釘で固定してます。
釘は二次防水も貫通し、コンクリートまで刺してます。
だから、シングル裏へ入り込んだ雨水は、この釘穴周りからコンクリートへ到達し、室内で雨漏りするのです。
アスファルトルーフィングは柔らかい素材ですから、釘が刺さってもある程度は釘周りを押さえるように密着するので水は通らないとも言われてるようですが、弊社ではそれは半分以下だと感じます。
シングル葺屋根が本当に雨漏りの原因なのかは、室内の漏水部とシングルの怪しい箇所で電気抵抗値を計測すると原因箇所がわかってしまいます。ビルスコープの電気抵抗による漏水調査は非破壊だし、大きな工事音もしません。
場所によって電気抵抗値が大きく違ってくるので、経験による確かな判断が必要となってきます。また、ここが原因ではなかった場合も、すぐにその場所に合った工具と調査方法で調査してしまいます。
アスファルトシングルは屋根の形に添って曲げることができ、低価格。とても使いまわしのいい屋根材だと思いますが、その施工を誤ったり、劣化しても放置していると雨漏りの原因になります。
この記事を参考にご一考してもらえると幸いです。
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